外生菌根菌の生態と生理にまつわるいろいろなこと

樹木の多くは根と菌類との共生体である外生菌根を形成する。外生菌根菌は菌根から伸びる根外菌糸で吸収した無機養分や水を宿主植物にも供給する一方、植物からは光合成産物を受け取って自らの炭素源としており、森林生態系の物質循環において重要な位置を占めている。食用となるきのこを形成するものも多く、日本ではマツタケが特になじみ深い。

そのような外生菌根菌の動態とその裏にある生理的な諸性質を明らかにする(あわよくば特許でもとって大儲けする)ことが私の研究の大目標である。これまで、外生菌根菌であるアミタケを材料に、その動態を明らかにするための基礎的な技術として種や菌株を識別するためのDNA分析法を確立し、アカマツ天然林に調査地を設けて地掻き等の林内環境の整備がきのこの発生本数に及ぼす効果とその背景についての解明を試みているほか、発芽率が低いことが課題となっていた胞子の発芽方法の検討を行ってきた。胞子の発芽が宿主植物の根の浸出物で誘導されるなど、両者の関係を探る上で興味深い結果も得られている。

今後は、上記の研究をさらに発展させるほか、DNA分析法を検討する過程で純粋培養下できのこを形成することを偶然見出したヌメリニガイグチを突破口に、マツタケとも共通するきのこの形成条件が見えてくるのではないかとひそかに期待しているところである。

2005.07.27
菊池研介

photo1
a) 研究の主な材料としたアミタケ(Suillus bovinus)の子実体(きのこ)
b) アカマツとの二員培養によって観察されたアミタケ胞子の発芽

photo2
c) 液体培地上で形成されたヌメリニガイグチの子実体原基
d) c)を寒天培地上に植え替えた結果形成された幼子実体

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