マツ材線虫病における電解質漏出現象

植物は高温や低温,乾燥,病気などさまざまなストレスを受けると,細胞膜の物質を通す性質が変化し,細胞外へ電解質(イオン)が漏れ出ることが知られています.こうした細胞膜の性質の変化を調べる方法として,ストレスを受けた組織を水に浸し,漏れ出た電解質を電気伝導度計によって測定するという方法があります.松の萎凋病(葉がしおれる病気)であるマツ材線虫病は,樹体内に侵入したマツノザイセンチュウが細胞に対して加害することによって細胞の変性を引き起こします.そこで,マツ材線虫病における細胞の性質の変化を調べるため,接種後の電解質漏出度(電解質が細胞から漏れている割合)を測定しました.

クロマツの切り枝(20cm)にマツノザイセンチュウを接種し,接種しない切り枝と比較したところ,6日後までは変化がありませんでしたが,12日以降は接種を行った切り枝で著しい電解質の漏出が発生しました(図左).また,電解質漏出と細胞の生死との関係を調べるために,同時に解剖を行い,生きている細胞核だけを光らせる染色法(DAPI染色)を用いて生きている細胞核の数を調べました.その結果細胞核の数が減るより前に電解質の著しい漏出が起こることがわかりました(図右).

2006.09.13
小松雅史

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(左)マツノザイセンチュウを接種したクロマツ切り枝木部における電解質漏出度の変化
(右)マツノザイセンチュウを接種したクロマツ切り枝木部における電解質漏出度と細胞核数の関係

(論文:小松雅史・鈴木和夫(2006)マツノザイセンチュウ接種クロマツ組織の壊死過程における電解質漏出現象.樹木医学研究10:25-35.より)

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