担当教員:福田健二,松下範久
森林は樹木と草本植物,動物,微生物が複雑なネットワークを作って共存する生態系である.森林は一見すると永遠に同じ状態でそこに存在し続けているように見えるが,実際には個々の樹木が枯死と再生を繰り返し(更新),群落の構造や種組成自体も変化している(遷移).森林生態系の骨格ともいうべき樹木の種組成は,地域レベルでは地史や気候によって規定された植物相(flora)によって決まるが,実際の森林群落の組成と構造は,地形,地質や撹乱の歴史を反映している.森林群落では,それぞれの樹種が,進化の過程で獲得してきた生理生態的特性に応じてすみ分けており,樹種ごとの生理生態的特性を知ることは,森林群落成立のメカニズムや森林生態系の機能の理解のために必須である.一方,樹木は周囲の動植物や微生物との相互作用の中で生きており,なかでも従来あまり重視されてこなかった菌類の役割の重要性が明らかになってきている.森林植物学は,森林生態系の成立・維持のメカニズムの基礎を学ぶことにより「森林を見る目」を身につけることとともに,関連する科目である樹木学,森林生態学,造林学,樹木医学などへの導入となることを目標としている.
担当教員:木佐貫博光(三重大学)
陸上植物が作り出したひとつの大きな生態系である森林生態系を維持しているしくみを理解させるために,森林を構成する樹木の生活史,自然環境・生物的環境と樹木との相互関係を中心に講義する.
担当教員:勝木俊雄(国立研究開発法人 森林総合研究所)
樹木は,森林においてもっとも重要な構成要素である.したがって,森林科学では様々な視点から樹木を学問の対象としている.樹木学とは,こうした森林科学だけでなく,植物学や造園学なども含めた木本植物に関する知識を体系化したものであり,きわめて広範囲な学問である.本講義では,森林科学において樹木を取り扱うために必要な基礎的知識を身につけることを目的とする.基礎的な分類とともに,主要な樹種についての各論を交えて講義する.
担当教員:福田健二,松下範久
森林や樹木は,人々の生活に欠かすことのできない文化的・経済的価値を有しており,その保全に対する人々の意識は,今後,益々高まると考えられる.樹木医学は,このような時代背景から登場した,緑の質を扱う,多くの研究分野にまたがる総合的な学問である.本講義では,樹木の健康性をいかに評価し,健全な樹木を維持管理するかについて解説する.具体的には,主要な樹木病害についてその概要を講義するとともに,現在,我が国の森林に甚大な被害を及ぼしているマツ材線虫病とブナ科樹木萎凋病について詳説する.また,現在顕在化している森林・樹木の衰退現象を取り上げて講義する.さらに,緑の文化財保全対策事業として誕生した樹木医の今後の展望について講義する.
last update: 2025/04/01