小石川樹木園通信 No.03
樹木園担当 佐々木潔州
マンサク
小石川樹木園の早春を飾る花といえばマンサクです。 マンサク Hamamelis japonica Sieb. et Zucc.は、マンサク科マンサク属に属し、日本にはマンサク1種が自生しています。ただし、葉の形状の違いにより、オオバマンサクやマルバマンサクなどの変種に分けられています。マンサクは関東西部以西、四国、九州に分布していますが、オオバマンサクは関東地方中部から岩手県の太平洋側に分布し、マルバマンサクは北海道南西部から鳥取県までの日本海側に分布しています。マンサクとオオバマンサクは葉の形が連続的に変化するため、分布の境界域で両種を区別するのは難しいとされています。樹木園には、マルバマンサクの品種で花が紅色を帯びるニシキマンサク Hamamelis japonica Sieb. et Zucc. var. discolor Sugim. f. flavopurpurascens Rehder.が植栽されています(この場合の品種というのは分類の単位で種の下には亜種、変種、品種とあり、園芸種とは異なります)。花色は変化に富みますが、この画像の枝は特に花びら全体が紅色をしています。 |
![]() Hamamelis japonica Sieb. et Zucc. var. discolor Sugim. f. flavopurpurascens Rehder. ニシキマンサク |
![]() Hamamelis mollis Oliver シナマンサク |
園内には、日本のマンサクより早く開花し、花が大きく、数量の多いシナマンサク Hamamelis mollis Oliverも多数植栽されています。早い年は1月中旬から咲き始め、3月下旬まで咲き続けます。鮮やかな黄色の花を多数つけるため、遠くからでも目立ちます。シナという和名がついている通り、原産地は中国中部です。葉はマンサクよりも大きく、上面と柄に軟毛があり、下面に綿毛があって、白く見えます。マンサクとシナマンサクの交雑種は、園芸品種として栽培されています。交雑種はシナマンサクを台木として接ぎ木で増やしますが,接いだ枝が数年で枯れてしまい、後には台木のシナマンサクの枝が大きく伸びてしまった株を見かけることがあります。樹木園内のシナマンサクには発芽力のある種子ができないためか、実生を見ることはありません。 |
樹木園にはその他に、アメリカマンサク Hamamelis virginiana L.が植栽されています。シナマンサクよりオレンジ色がやや強い花をつけますが、園内の木は最近衰退してきて時々しか開花しません。本来は秋咲きのようですが、樹木園ではシナマンサクと同じ早春に花を咲かせていました。葉の形だけでシナマンサクと識別することはなかなか難しいです。 |
2011.03.08