小石川樹木園通信 No.02
樹木園担当 佐々木潔州
マンリョウの仲間
正月の縁起物として飾られるマンリョウ(万両)やセンリョウ(千両)。今回は、マンリョウの仲間について取り上げます。 |
![]() Ardisia crenata Sims マンリョウ |
![]() マンリョウの葉 |
小石川樹木園内には、多数のマンリョウ Ardisia crenata Sims が生育しています。植栽はしていませんので、鳥によって運ばれた種によって自然に増えたようです。マンリョウはヤブコウジ科の植物で、7月中旬から下旬に白色の花を咲かせ、冬には赤い果実をたくさん付けます。園内には、果実の色が白色のシロミノマンリョウ Ardisia crenata Sims f. leucocarpa (Nakai) Ohashiも生育しています。マンリョウの樹高は最大100cmぐらいということですが、園内で50cm以上に育つ個体はめったにありません。成長は遅いですが主幹が折れても萌芽することもあり、病気で枯れることもあまりありません。今後、生存年数を追跡する予定です。 |
![]() Sarcandra glabra (Thunb.) Nakai センリョウ |
センリョウ Sarcandra glabra (Thunb.) Nakaiはセンリョウ科の植物で、冬に赤い果実を付けた姿はマンリョウと似ていますが、分類学的にはかなり異なります。原始的な被子植物とされており、花は黄緑色で花びらはなく、雌しべの背側に1本の雄しべが付着するだけの単純な構造をしています。園内ではマンリョウなどと比較すると生育本数は少なくなっています。 |
![]() Ardisia crispa (Thunb.) DC カラタチバナ(百両) |
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百両と呼ばれる植物は、ヤブコウジ科のカラタチバナ Ardisia crispa (Thunb.) DCです。マンリョウと同じ頃に開花して冬に赤い果実をつけますが、葉の形態は細くてマンリョウとは異なります。園内ではマンリョウほど出現頻度は高くありませんが、多くの個体が生育しています。果実の数量がセンリョウやマンリョウより少ないので、百両と呼ばれることになっています。成長は遅いですが、樹高は30cmほどには達します。マンリョウと同様に病虫害を受けているものはあまりありません。 |
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マンリョウとカラタチバナの果実を比べたのが左の写真です。園内にはヒヨドリなどの果実を好んで食べる鳥がたくさん飛来しますが、どちらの果実もムラサキシキブなどの果実よりも遅くまで残っています。鳥たちには、あまり好みのものではないのでしょうか。果肉が薄くて、あまり食べごたえがないのかもしれません。果肉などを除くと写真のような種子があらわれます。種子は比較的やわらかく、カミソリなどで簡単に切れます。外観は大豆にも似ていますが、大豆は子葉種子であるのに対して有胚乳種子になります。 |
![]() Ardisia japonica (Thunb.) Blume ヤブコウジ(十両) |
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園内には、十両と呼ばれるヤブコウジ科のヤブコウジ Ardisia japonica (Thunb.) Blumeも生育しています。果実の形はマンリョウやカラタチバナと似ていますが、果実の付き方は百両のカラタチバナよりも少なく、樹高も10から20cm程度しかありません。園内の数ヶ所にまとまって生育しています。 |
2011.03.08