外生菌根菌の子実体への光合成産物の転流

樹木に共生する外生菌根菌は,宿主の土壌栄養素(リン酸や窒素)の吸収を促進する一方で,炭素源は樹木の光合成産物から供給されています。私たちは,外生菌根菌の子実体(キノコ)への炭素転流に着目し,宿主で生産された光合成産物が,外生菌根菌の子実体へどのように転流するのかを,イメージングプレートを用いた経時的オートラジオグラフィー(研究ファイル「外生菌根共生系における物質転流を可視化する」)によって,視覚的・経時的かつ定量的に調べました。

生花などに使用するフローラルフォーム(オアシス)を詰めた平箱へ,アカマツ(Pinus densiflora)-ウラムラサキ(Laccaria amethystina)の菌根苗を移植し,子実体原基もしくは子実体を形成させました。その後,菌根苗の地上部を14CO2で標識し,イメージングプレートに露光することで,経時的にオートラジオグラフィーを行いました。

地上部標識1日後,14Cは紫色を保った子実体原基および子実体には転流しましたが,成長を停止して,灰色や白色,茶色などに変色した子実体には転流しませんでした(図1)。また,標識後も成長を続けた子実体に2回の標識を行った場合,子実体の成長期間を通じて14Cの蓄積量は増大しました。これらのことから,①生理的な活性を有する子実体にのみ光合成産物が転流すること,②子実体には直近に合成された光合成産物が迅速に転流することが明らかになりました。

図1

図1.ウラムラサキ(Laccaria amethystina)の子実体への14C光合成産物の転流(Teramoto et al., 2012より改変)
左は14Cを添加した外生菌根共生系の写真; 右はオートラジオグラフ。

2013.05.28
呉炳雲

論文:

Teramoto M, Wu BY, Hogetsu T (2012) Transfer of 14C-photosynthate to the sporocarp of an ectomycorrhizal fungus Laccaria amethystina. Mycorrhiza 22: 219-225.

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