富士山火山荒原におけるアーバスキュラー菌根菌の一次遷移

菌根共生は植生の遷移と密接に関連している。私は、この菌根共生を植生再生に活用することを念頭において研究を進めている。富士山の東南斜面は、イタドリやオンタデなどの先駆植物が火山高原上に点在し、一次遷移の初期過程にあるが、現在この地域で、植生の一次遷移に果たすアーバスキュラー菌根菌(A-菌根菌)の共生機能の解明に取り組んでいる。

これまでに、初期に定着する先駆植物イタドリのA-菌根菌感染率は低いこと、オンタデにいたっては全く感染していないこと、それに比べて、比較的後に定着するフジアザミ、クサボタン、ヤマホタルブクロの3種には多数のA-菌根菌が感染していることを見いだした。また、植物サンプル採取地の標高が低くなるに伴って、菌根形成率が増加することも明らかにした。さらに、菌根および胞子の種を28S-rDNA塩基配列により同定したところ、標高が低くなるほど、菌根菌の種多様性も増加しており、植生遷移と平行してA-菌根菌群集も遷移することが解った。

今後さらに、接種実験や現地植栽実験を通して、一次遷移下での植生定着に対するA-菌根菌の共生機能について検証していく予定である。

2005.07.27
呉炳雲

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富士山火山荒原におけるイタドリのパッチ

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左はイタドリで形成されていたArumタイプの菌根
右はヤマホタルブクロで形成されていたParisタイプの菌根

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