この病気にかかった葉っぱは,図1(右)のように淡褐色から褐色,不整形に枯れ,変色部には白色から淡褐色の粒病菌体が多数形成されます.似たような症状の病気で,ナラ類白粒葉枯病という病気が知られています(参照).ナラ類の白粒葉枯病はMycopappus quercus という糸状菌によって引き起こされます. クロミサンザシの葉枯病に見られた病徴・標徴がナラ類白粒葉枯病に似ていることから,この病気がMycopappus属菌によって引き起こされていると疑われました.そこで,クロミサンザシの葉枯病菌を形態,培養性状,遺伝子解析,および病原性の面から調査し,病原菌の所属を検討しました.
結果,この病原菌を北米・トルコにおいて発生の報告があるMycopappus alni と同定しました(図2).Mycopappus alni はカバノキ科のハンノキ属・カバノキ属およびバラ科ナシ属に寄生する菌です.日本でこの菌が確認されたのは初めてであり,またこの菌にとってサンザシ属は新たに発見された宿主植物です.クロミサンザシは自生する場所がごく限られているせいか,これまで病気の報告がありませんでした(日本植物病理学会 2000).白粒葉枯病はクロミサンザシで分かっている唯一の病気です.
図2.粒状菌体の顕微鏡写真.スケールバーは0.1mm
2006.9.22
高橋由紀子
引用文献:日本植物病理学会(編). 2000. 日本植物病名目録. 857 pp, 日本植物防疫協会, 東京.
論文:Takahashi Y, Matsushita N, Hogetsu T, Harada Y. First report of Mycopappus alni in Japan: species identification of the pathogenic fungus of a frosty mildew disease in Crataegus chlorosarca. Mycoscience 47:388-390, 2006.