ヒートアイランド現象と街路樹のフェノロジー

現在、東京都市部ではヒートアイランド現象による気温の上昇が社会問題となっています。ヒートアイランド現象による気温の上昇は特に夜間に顕著に現れ、新宿と八王子の気温を比べると、5℃以上も温度差が生じる日もあります。

都市部のヒートアイランド現象を抑える取り組みとして、ビルの屋上緑化や街路樹の植栽などが挙げられます。屋上緑化や街路樹による日陰効果は、ビルの屋上のコンクリートやアスファルトの道路に直射日光が当たるのを防ぎ、地温の上昇を抑制します。そして地温の上昇が抑制されれば、気温の上昇も抑制されることになります。

では、都市部の街路樹としてたくさん植栽されているイチョウ・トウカエデ・ハナミズキなどは、極端に夜間気温の高い都市部で健康に生育できるのでしょうか。

私は、東京都内に植栽されている上記の街路樹3種の健康状態を調べることを目的として、フェノロジー(開花・開葉・紅葉・落葉の時期)について、都市部と郊外の違いを観察しています。春のフェノロジーについては、暖かい都市部の方が若干開花や開葉が早まることが観察され、秋のフェノロジーは、都市部の街路樹の紅葉や落葉が極端に遅くなることが観察されました。そのため、年によっては1月になってもまだ葉をつけたままの異常な樹木や、気温の昼夜の較差が小さいために十分に紅葉が進まないまま落葉してしまう樹木も観察されています。

ヒートアイランド現象は街路樹のフェノロジーに大きな影響を与えていますが、今のところはどの樹種も生育できずに枯死に至ってしまうような厳しい環境にはなっていないようです。しかしこのままヒートアイランド現象や地球規模の温暖化が進むと、東京の街路樹の構成が完全に変わってしまう日が来るかもしれません。

2005.07.27
高橋創

photo1
紅葉したトウカエデ(多摩市京王永山駅付近)

photo2
桜の花の並木(八王子市南大沢駅付近)

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