樹木種子の発芽場所と外生菌根形成

外生菌根菌は多くの樹木にとって生長に必要不可欠な共生菌です。特に森の中で小さな樹木の実生(めばえ)が生き残るためには、発芽後すぐに菌根菌と共生することが大事だと考えられています。それでは、森の中では、どんなところに発芽した実生がより菌根菌と共生しやすいでしょうか。

これを調べるために、外生菌根菌の宿主となるミズナラとイヌシデの実生を1)スギ林、2)カラマツ林、3)自然林から取ってきて、どのような外生菌根菌と共生しているのか、調べてみました。カラマツは外生菌根菌と共生していますが、スギは内生菌根菌と共生する樹木で、外生菌根菌とは共生しません。また、自然林には多くの広葉樹が生えていますが、それらの多くは外生菌根性の樹木です。

調べた結果、カラマツ林と自然林から採集した実生では根のほとんどの部分に外生菌根菌がついていました(図1)。その一方で、外生菌根性でないスギ林から取ってきた実生の根にはあまり外生菌根菌がついていないことがわかりました(図1)。また、実生についていた外生菌根菌の種構成を成木の菌根菌と比べてみると、実生の菌根菌は採集場所の成木の菌根菌とより似ていることがわかりました。

図1
図1.各林分から採集した実生の外生菌根形成率。白棒がミズナラ実生、黒棒がイヌシデ実生を表す。外生菌根性成木から成るカラマツ林、二次林で採集した実生の多くは外生菌根菌を形成していたが、外生菌根性でないスギの近くで発芽した実生からはほとんど外生菌根菌が見つからなかった。

この研究では、実生への外生菌根菌のつきやすさ、その種構成は発芽場所によって異なることがわかりました。これにはどんな意味があるでしょうか。菌根菌がつきにくい場所で発芽した実生は、土壌の養分を吸収するのが困難なことが想像できます。また、実生に共生する菌根菌の種構成が異なれば、実生の成長しやすさも変わるかもしれません。

今後は実際に、菌根菌によって実生の成長しやすさが変わるのか調べて行きたいと思います。

少しだけ詳しい結果を知りたい方は以下のPDFファイルをご覧下さい(288KB)。

2007.06.10
石田孝英

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