外生菌根菌が冷温帯林の森林更新に果たす役割の解明

外生菌根菌は、多くの樹木の主要な共生菌であり、光合成産物を植物から得るかわ りに、土壌中の窒素や燐を植物に供給することがよく知られている。それ以外にも、 土壌中の毒性物質の吸収阻止、病原性菌の感染阻止など、植物に与える影響は大きい。しかし、外生菌根菌の生理的な機能が明らかにされる一方で、森林内での生態的機能はほとんど解明されておらず、たとえば、一つの森林や、一樹種に何種の菌根菌が共生しているのか、といったことさえわかっていない。

森林更新の第一歩である実生の定着には外生菌根菌の早期の感染が不可欠である。 どのような外生菌根菌に感染するかによっても、実生の成長が変わってくることから、外生菌根菌の地下部の分布様式は、植物群落の構成にも影響しているはずである。また、外生菌根菌に渡る炭素量は、光合成産物の10-20%にのぼると言われているが、日陰で暮らす実生は、どのように菌根菌を養うのだろうか。私は、外生菌根菌が森林更新に果たす役割を明らかにするため、1)成熟した森林における外生菌根菌の多様性・寄主特異性の解明、2)外生菌根菌の感染経路(胞子/根外菌糸)の解明、3)Common mycelial networkの機能解明、の3点について、研究を進めている。

2005.07.27
石田孝英

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根端で見られる多様な外生菌根

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