縞枯現象における樹木枯死の推移と枯死機構

長野県の北八ヶ岳の山には“縞枯れ”と呼ばれる現象がみられます。これは,等高線方向に帯状に樹木が集団枯死する現象で,遠景では立枯れた樹木の幹が白い縞のように見えます(図1)。この現象は,北八ヶ岳のほかに北は八甲田山系,南は大峰山系など,日本の中部山岳に所々見られます。それらに共通して,シラベやアオモリトドマツが優占する森林です。

この縞枯林帯では,立枯れ部分の斜面上方の生きた樹木が順に枯死することで,“縞”は時間の経過とともに斜面上方に移動します。一方で,立枯れ部分の林床では,新たな稚樹が成長するため樹林部も斜面上方に広がります(図2)。このように,縞枯現象は森林の更新様式の一つであり,森林が衰退する現象ではありません。

集団で樹木が枯死するという原因として,斜面を吹き抜ける風向が一定した卓越風の存在が考えられます。樹木が揺れることで,枝葉や根が損傷すること,強制蒸散による乾燥,周りの樹木が枯死して日射が強くなることなど,様々なストレスが複合して枯死に至ると考えられています。

1992年に設定した調査地において,継続的な現地調査,空中写真を用いた調査,気象データを用いた解析,樹木の生理状態の測定など様々なアプローチで,樹木の枯死機構を研究しています。

2005.07.27
稲垣雄一郎

図1
図1 茶臼山から見た縞枯山の南西斜面。白い縞の部分が枯死した樹木。

図2
図2 立枯れ木と稚樹。写真の奥の生きた樹木が順に枯死する。

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