小石川樹木園通信 No.07

樹木園担当 佐々木潔州

ムラサキシキブの仲間

ムラサキシキブ(Callicarpa japonica Thumb.)は、北海道から九州、沖縄まで日本全国各地に自生しています。秋には紫色の果実が目立つので、わかりやすい樹木です。それほど珍しい樹木ではありませんが、葉の大きさや形果実の数や大きさなどの変異が大きく、小石川樹木園の中だけでもかなり大きい個体差が観察されます。秋の果実の色が紫色できれいなので庭に植えられることもありますが、植えられているものはムラサキシキブとは別種のコムラサキ(Callicarpa dichotoma (Lour.) K.Koch)が多いようです。

ムラサキシキブ
ムラサキシキブCallicarpa japonica

関東以西に分布するオオムラサキシキブ(Callicarpa japonica var. luxurians Rehder)は、花の数や果実の大きさがムラサキシキブと比較して多いのですが、これらは連続的に変化するようなのではっきりした差が認識できないこともあります。小石川樹木園の個体は、以前はもっと花序の花の数も多く果実も大きかったのですが、この写真の果序はムラサキシキブとの明快な差はありません。また、最近は葉も小さくなり、ムラサキシキブとの違いがはっきりしません。

その他に、葉の全面に毛が多いヤブムラサキ(Callicarpa mollis Siebold et Zucc.)が植栽されています。葉だけではなく枝や果実の柄まで毛(星状毛)が密生しているので、ムラサキシキブやオオムラサキシキブとは簡単に区別ができます。

ヤブムラサキ
ヤブムラサキCallicarpa mollis

2023.5.31

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