小石川樹木園通信 No.06

樹木園担当 佐々木潔州

常緑のサクラの仲間(リンボク、バクチノキ)

サクラというと春に咲き、秋に紅葉する、落葉樹のイメージがあると思います。しかし、リンボク(Prunus spinulosa Siebold et Zucc.)とバクチノキ(Prunus zippeliana Miq.)は常緑樹で9月~10月に開花します。例年、開花時期になると注目されます。


リンボクは、若齢木のときには葉に鋸歯がありますが、年を重ねてくると鋸歯は目立たなくなっていきます。画像は、樹齢20年以上、樹高10 mほどの個体の葉で、鋸歯がはっきりしません。葉だけを見るとカシの仲間か、モチノキ科のナナミノキ(ナナメノキ)と間違える可能性があります。花のつき方(花序)は総状花序で、ウワミズザクラに似ています。花弁は小型で脱落しやすいようで、雄蕊と雌蕊が目立ちます。

リンボク
リンボクPrunus spinulosa

バクチノキの樹皮は黒っぽいのですが、成長すると外側の樹皮が脱落してオレンジがかった色になります。これが博打に負けて身ぐるみはがれた状態を連想させるというのが名前の由来のようです。葉柄には蜜腺があり、鋸歯の先端が腺点になっているという、サクラの仲間の葉の特徴が出ています。花序はリンボクと同じ総状花序なのですが、軸の長さはかなり短いです。房総半島以西に分布しますが、関東では希少種で、千葉県や神奈川県には天然記念物に指定されている群落や個体があります。

バクチノキ
バクチノキPrunus zippeliana

小石川植物園には、両種に近縁のセイヨウバクチノキが生育しています。花期は春で、総状花序も長くなります。また、葉柄の蜜腺がはっきりしません。

サクラ属(スモモ属)は6亜属に分類されますが、分類法によってはこの亜属を属として独立させる考え方もあります。その場合は、リンボク、バクチノキ、セイヨウバクチノキの属名は、バクチノキ属Laurocerasusになります。

リンボクとバクチノキの果実は、ヤマザクラなどと異なり先端がとがった形状をしています。とくに、未熟な間はとがっている印象がありますが、成熟するにつれて楕円形に近づくようです。花序の形が同じウワミズザクラの果実も多少とがっています。小石川樹木園では、リンボクもバクチノキも種子ができますが、播種したことはないので、発芽するかどうかは不明です。

参考としてヤマザクラの画像を載せます。

ヤマザクラ

2023.5.31

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