小石川樹木園通信 No.01

小石川樹木園の管理を担当している農学生命科学研究科技術専門職員の佐々木潔州です。現在、森林植物学研究室と共同で植栽樹木の標本画像データベースを作成中です。森林植物学研究室のホームページを借りて、関連した話題とともに少しずつ標本画像を載せていきたいと思います。

ヒイラギ(柊)

先月は節分でした。地方によっては、節分にはヒイラギを供える習慣があるようです。そこで、第一回目はヒイラギを取り上げます。ヒイラギ Osmanthus heterophyllus (G.Don) P.S.Greenはモクセイ科の常緑小高木で、関東以西の本州、四国、九州、琉球、台湾に分布しています。若木の葉には画像のように2から5対の鋭い刺端に終る切れこみ(歯牙)があります。さわると鬼でも痛い刺のような歯牙があるので、魔除けにされるのでしょう。この歯牙は成木になると無くなり、葉の縁は丸くなります。甘い香りの花を咲かせるキンモクセイと同じモクセイ属で、白色の花をつけますが、残念ながら小石川樹木園の個体は花を咲かせたことがありません。

Osmanthus heterophyllus (G.Don) P.S.Green
Osmanthus heterophyllus (G.Don) P.S.Green
ヒイラギ
Ilex aquifolium L.
Ilex aquifolium L.
セイヨウヒイラギ

ヒイラギといえば、セイヨウヒイラギ Ilex aquifolium L.も樹木園に育っています。イラン以西のヨーロッパと北アフリカに生育しており、西欧では、ヤドリギと同じようにこのセイヨウヒイラギがクリスマスの飾りに使われます。常緑の葉と赤い実が美しく、クリスマスカラーになっています。ところでセイヨウヒイラギは和名も葉の形もヒイラギと似ていますが、モクセイ科ではなくモチノキ科に属する常緑樹です。英名でEuropean hollyと呼ばれています。ヒイラギとの大きな違いは葉のつき方です。ヒイラギは枝の節ごとに2枚ずつ葉をつけますが(対生)、セイヨウヒイラギは枝の節ごとに1枚ずつ葉をつけます(互生)。また、セイヨウヒイラギは赤い実をつけますが、ヒイラギの果実は黒または濃い灰色です。

名前にヒイラギという名が入る樹がもう一つ樹木園には育っています。モチノキ科のヒイラギモチ classIlex cornuta Lindl.です。中国原産で、チャイニーズホーリーやシナヒイラギとも呼ばれ、クリスマスの飾りや庭園木などに使われます。セイヨウヒイラギと比較して歯牙が大きく鋭い葉をつけています。葉が堅くて立体的なので、スキャナへの取り込みには苦労しました。

Ilex cornuta Lindl.
Ilex cornuta Lindl.
ヒイラギモチ

余談ですが、モチノキの仲間は、英語ではhollyと言いますが、ハリウッド付近に生育するHollywoodは、モチノキ科ではなくバラ科の常緑小高木です。常緑で葉の縁に鋸歯(ギザギザ)があるところや果実が赤いところはモチノキ科のhollyと共通していますが、葉の幅が狭くて鋸歯も尖っていないので、それほど似ているとは思いませんでした。

2010.03.11

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